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guerrilla loveさん観測所です。主に戸塚祥太さんの舞台の観劇記録を書いています。

舞台『午前0時のラジオ局』観劇記録

観劇日

3月21日 @ 長崎 長崎市民会館文化ホール

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舞台『午前0時のラジオ局』公式サイト|公演日程やチケット情報

一応長崎県民なんだけど、初めて来た長崎市民会館。めちゃくちゃ古い建物だなあ…と思って後で調べたら築49年とかだった。大先輩やんけ。中もかなり年季が入っていて、ものすごく雰囲気がありました。会場の佇まいと作品がすごく合っていたな〜と思います。古い会場ほどマッチする気がする。

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私は一般でチケットを買ったので2階席でした。せっかくだから、と長崎在住の友人を誘っての観劇。

下手寄りの席だったんだけど、ステージセットが少し下手側に向かって斜めに配置されていたので、真ん中よりも下手側の方が気持ち正面になるという不思議な配置。(でもこれにはちゃんと意味があった!!)

 


福ちゃんのお芝居も、文ちゃんのお芝居も初めて観ました。お2人のことは、A.B.C-Zのバラエティ番組にゲストに来たりしていたので、普段の感じとかは分かるんだけど、お芝居があんなに自然で上手だなんてほんとにびっくりしました。2人とも声がすごく良いっていうのもあるし。文ちゃんの標準語めっちゃすてき!

 


途中休憩なしの1時間50分。全体的にテンポよく進むお話は、後半にかけての緩急が本当にすごい。

福ちゃん演じる陽一って本当に幽霊なの?あれ?やっぱり冗談?と惑わされたり、ちょくちょく挟まれるアドリブやセリフのくすぐりに笑えて、みなさんの熱演にめちゃくちゃ泣ける…観劇後は感動で胸があったかく優しく、とても幸せな気持ちになる素晴らしい舞台でした…!次の日が平日じゃなきゃ絶対増してた…また観たいよ〜再演待ってます!!!!!

 

あらすじ

地方局の新米アナウンサー・鴨川優は、テレビからラジオの担当に異動となり憂鬱な気分を抱えていた。そんな矢先に、やたらと陽気なディレクター・蓮池陽一から突如「午前0時に始まる新番組」の司会に抜擢される。さらに、番組の初オンエアに向けて準備を行っていたある夜に突然の豪雨で孤立した村へ災害情報を流すという大役を担うことに。
そんなドタバタの中で陽一のとんでもない秘密が発覚する。実は陽一は、30年前に亡くなっていて、若い姿のまま深夜の番組を担当する幽霊ディレクターだった!
アシスタントに山野佳澄も加わりいよいよ新番組がスタートするが、オンエア直後から番組内で次々と不思議な出来事が起こるようになり・・・。

(公式サイトより引用)

ラジオのお便りや、キャラクターの回想シーンなどでみなさん1人何役かを演じるんだけど、中でも全3役を演じ分ける福ちゃんがすごい。("すごい"でまとめたくないんだけど圧倒的に語彙力が足りない…)

はじめ浮遊霊として語られ、観客や優(文ちゃん)には見えない、学生時代に亡くなった優の同級生・沢田の仲介役を陽一がしていたかと思えば、会話の中で自然に沢田として優と対話を始める。立ち位置を変えながらグラデーションのように役が移り変わり、それがとても自然だったし、何より「あっ今沢田くんになった!」って誰でもすぐ分かる福ちゃんの演じ分けがすごすぎた。

セットの不思議な配置の謎も陽一→沢田になった瞬間に解けました。沢田は直前の陽一のセリフから、190cm超えの高身長の人物ということが分かるのですが、ステージセットの特殊な配置によって、2人が並んだ時に沢田(福ちゃん)の身長が優(文ちゃん)と比べてかなり(20cm以上)高いように錯覚するんですよね。フラットなはずのステージが、セットの配置でちょっと上手側に傾斜がついたように見えるので、陽一と優ではなく、沢田と優が会話をしているように見えるという…文章ではなかなか伝わりづらいのが歯痒いけど笑 ステージセットも含めて緻密に演出されているのが分かってめっちゃ感動しました。(ちなみにこのことを観劇直後に友人に大興奮で話したら全然気づいてなかった笑 そんくらい細かい演出)

 


あと、長崎という土地で観られたことにすごく意味を感じたシーンもありました。

話は少し逸れますが、長崎県民って、年齢問わずたぶんどの世代でも"原爆"という言葉を心の奥底ににずっと忘れないよう刻んでるんですよね。もちろん私も当時を経験したわけではないけど、小さい頃から平和学習という形で原爆のことを教えられてきたので。8月9日は夏休み中ですが、毎年登校日となっていて、全校生徒平和学習の授業を受けていました。(今もなのかな?)また、大人になってからも11:02にはどんな状況にあっても(たとえば車に乗っていたとしても路肩に車を停めて)サイレンの間黙祷をする県民なんですよね。作者である村山さんが長崎出身ということもあって(そして現役の長崎のアナウンサーさん)、戦争に関するエピソードを入れていたんだと思うけど、予想だにしていなかったので思わずグッと身体に力が入ったのが自分でも分かりました。

ラジオ局に届いた年季の入ったフルートにまつわるエピソード。福ちゃんがお便りをくれたリスナーの旦那さん役を担ったのですが、ここでのお芝居が本当にすごかった…戦争で命を落としたはずの旦那さんと再会する話だったんだけど、奥様役のかすみちゃんとのかけ合いが本当に辛くて…会場からもすすり泣く声が至る所から聞こえました。(私も例に漏れず泣いてた)

作者さんの出身地とはいえ何で東京、大阪ときて長崎なんだろう珍しいな〜と思っていたんだけど、一部ではあるけど戦争や原爆に関するエピソードを長崎という土地で上演することには大きな意味があるよね。ほんと観に行ってよかった…

あと、福ちゃんの長崎弁がめっちゃ上手だった。私たちより上のじいちゃん世代が使う長崎弁だったんだけど、「え?福ちゃんってこっちの人だったっけ?」ってなったくらいガチで上手かった。地元じゃない人が使う方言って、微妙にイントネーションとかニュアンスが違ったりしていて違和感があるものなんだけど、それが一切なかった。よくイメージで言われる九州弁でも博多弁でもなく、""長崎弁""!福ちゃんってどこまでもすげえ。

作中ではラジオのお便りに沿っていろんなエピソードが語られていたり展開されたりしていて、お話とお話がリンクしていたり伏線回収のようなシーンが続くんだけど、唯一このフルートのエピソードだけは独立していたし、フルートがその後誰の手にどんな風に渡ったのかなどは描かれず、未来に繋がる感じで終わったんですよね。フルートのその後が気になります。続編やりましょう?


現在では陽気に振る舞い飄々としている陽一だけど、事故に遭い、自分は亡くなって幽霊になってしまうがラジオ局の建物からは一歩も出られず、病院で眠り続けている奥様には会いにすら行けなくてもがき苦しんでいる回想シーンも印象的でした。絶望して、立ち直って現在に至るまで一体どんな過程を経てきたのか…。明言はされないので行間を読ませるというか、観客側が想像するしかないんだけど、30年か…とちょっとくらくらしました。30年の重みを感じてからの現在のシーンで明るい陽一を見るとまた違ったように見えてくる。もうほんと構成が素晴らしいんだよな…

 

ラストは30年間眠り続けた結果亡くなってしまった奥様と、その奥様に聴かせるためにラジオを続けていた陽一も一緒に行ってしまうんだ…とさみしさと感動で泣いて終わるかと思いきや、いや残るんかい!まだラジオ続けるんかい!!!というまさかの結末笑 きっと観客みんな優とおんなじ気持ちだったしおんなじ顔してた笑 幕が降りる瞬間は泣きながら笑って拍手してました。なんて素敵な作品!

 

この日は作者である村山アナと福ちゃん、文ちゃんの3人で終演後アフタートークもありました。

村山アナの紹介で出てきた福ちゃん文ちゃん(コンビ名みたいw)、3つ並べられた椅子のどこに誰が座るのか譲り譲られワタワタ…w トークも終始ゆるっゆるで笑 終わってはける時も、上手にはけるのか下手にはけるのかワタワタ…w 文ちゃん最初違うところにはけようとして福ちゃんに連れ戻されたりして、最後まで可愛いお2人にずっとニコニコしちゃいました。

仲が良いのがよく伝わったんだけど、作中でも、ここ多分アドリブなんだろうな〜ってところで思わず笑っちゃったりとかしてたので、舞台を降りても良い関係なのって作品にも良い影響がみえるよなって改めて感じた。

 

長崎って舞台が上演されることってあんまりなくて。たとえば福岡だったら博多座とか定期的に舞台が上演されたりしているし、地方公演しますよってなった時は大体九州公演は福岡でやることが多いんですよね。なので"舞台を観に行く"っていうことがあまり日常として根付いていない土地だと思うんだけど、それでもほとんど満席に近い座席の埋まり方をしていたし、アフタートークで福ちゃんが「長崎の方どのくらいいらっしゃいますか?」って聞いた時に8割方手を挙げられていたのがなんか嬉しかったです。長崎の人に見てもらえてよかったなって思う。(私も一応長崎の人だけど、ずいぶん長いこと住んではないからさw)

 

最後に、これはジャニオタあるあるじゃないかなと思うんだけど、作中で陽一が優のことを「優!」って呼ぶ時、脳内変換で「YOU!」ってしちゃってたなっていうどうでもいいこと言っとく。きっと私だけじゃないはずだと信じて、、、、

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