あなたは夢、あなたは光

guerrilla loveさん観測所です。主に戸塚祥太さんの舞台の観劇記録を書いています。

ミュージカル『スワンキング』観劇記録

私はネタバレ絶対見ないマンなので、本来ならば観劇当日までネタバレを徹底回避するのだけど、今回に関しては実在の人物を史実に基づいて描いた物語だということで、ある程度は予備知識を入れておいた方が良さそうだな〜と思い(今回入るのは一度だけ、しかも大千穐楽の観劇予定だったため)、話題になっていた大音さんのYouTube動画を予習という形で前日に観てから観劇に臨んだ。


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これが観といて大正解だった。動画の構成も良かった。

第一弾の動画は、題材が高尚に感じてあまり食指が動かないひとも、きっと「おっ?おもろそうやんけ、観てみようかな」ってなるほどだったし、観に行く予定のひともさらに興味が増す内容だった。

("推し活の物語だ!"って言われて「おっ?」てならんおたく、おる?おらんよなあ…)

第二弾の動画は、歴史的背景や当時の世界情勢を主に、とても簡単にわかりやすく説明してくださっていたので、自分でネットとかの文献を闇雲に漁るよりも分かりやすくコンパクトにまとまっていてすごく良かった。出演者だからこそできることだなあ〜とても有り難かったです。

私が世界史学んでたのなんてウン十年前だもんな…笑 なんか塾講みたいな喋り方だな〜と思いながら観てたら、大音さんなんと塾講師の経験があるそうで笑 こんな講師いたら大人気になっちゃう…イケボだしイケメンだし…

 

観劇日

・7月18日 @福岡 キャナルシティ劇場(大千穐楽)

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(外観を撮り忘れるという凡ミス)
福岡在住でありながら、キャナルシティ劇場は初。むしろ場所も定かではないというボケボケな始末。

無印良品の隣に突然劇場の入り口あるのめっちゃ不思議…

一般で取ったA席なので2階の後方でしたが、傾斜がしっかりあったのでめちゃくちゃ観やすかったです。思っていたよりもコンパクトな劇場だった。

 

ミュージカル『スワンキング』公式|橋本良亮主演

さてスワンキング本編、思っていたよりも曲数が多かった。

ミュージカルってセリフ話してたと思ったらいきなり歌い出す、みたいなイメージあるけど、スワンキングはセリフよりも歌がメインだから、歌ってたと思ったらちょっとセリフ言う、くらいの割合。(私の体感ですが)

あと曲が耳に残る感じですごい良かったなあ。三官僚たちの「なーんたることっ♪」は観劇後の今でも歌いたくなっちゃうし、「トリスタンとイゾルデ〜♪」もめちゃくちゃ残ってる。サントラ出して欲しいくらい良曲揃いだった。キャラクターの心情もすごくわかりやすく伝わる楽曲たちだった。


ステージセットや場面転換も印象的でした。

ミュージカルや舞台でよくある、ステージが180°回転して場面転換する大掛かりな舞台装置ではなく、照明の色の変化やコントラスト、セットの位置をすこし移動する、などの最小限の変化で場面転換させる演出初めて見たんだけど、舞台装置の動きが最小限だと、ここまで物語に集中できるものなのか…!とすごく感動してしまった。(派手な動きする舞台装置もそれはそれですっげー!ってなるんだけど笑)

あと、それに伴ってなのか分からんけど、あの場ミリの数は初めて見た笑 もうステージの床でそういう柄みたいになってんの笑(ボルダリングの壁みたいな笑)

 


ストーリーの内容は、事前に予習していたこともあって分かりやすかったけど、ロシアとウクライナの情勢を、自国ではないにしてもほぼリアルタイムに目にすることの多い昨今、「武力ではなく芸術の力で国をひとつにする」と言うのがいかに理想論にすぎない絵空事なのかが、たまたまだろうけどこのタイミングで上演されることで実感を伴って理解できてしまうのがとても辛かった。

戦争をせずに、武器を持つことなく、誰の命も失うことなく、国や異なる民族がひとつになれるのならそれは素晴らしいことだと思うし、芸術にはそういう、"人をひとつにする力"を持っているとは本当に思うけど、たとえば私だって明日死ぬかもわからないような状況下で、ミュージカル観に行こうとか音楽聴こうとか思えるか?って考えたら…やっぱ思えないもんな。何言ってんだ?とか逃げてるだけでは?、って思われても仕方ないかも…って思っちゃった。

現代でも、有事の際には真っ先にエンターテイメントは不要不急だって言われてしまうのだから、当時の情勢からしたらとんでもないことだったんだろうということは想像に難くない。

 

18歳で即位して、40歳で亡くなるまでの話だけど、その間ルートヴィヒ2世は外見はもとより内面にもほとんど変化がないように見えた。夢見る少年のまま大人になったような…周りは出世したり、髭をたくわえたりして、見た目も言動も明らかに年齢を重ねて落ち着いたように見えたので、死の直前まで変わらず少年のように無垢で美しいままのルートヴィヒ2世はそういう意味でもずっと"異質"な感じだった。

ただ終盤にかけて表情は全然変わっていって、王になってすぐにワーグナーを呼び寄せた頃の、若々しくエネルギッシュで瞳にも光が宿っていた彼も、最後のほうは同じ曲を歌っていても瞳の光は消え失せ、その声にも哀愁の深みを感じた。橋本ルートヴィヒ…すげえな…

観劇前の「はっしー顔がいいし、きっとめっちゃカッコいいんだろうな〜!」なんて期待をゆうに超えてた。カッコいいなんてレベルどころじゃない…

事前に公開されていた冒頭5分の映像(太っ腹!)も観たけど、あの時よりも格段に歌が上手くなっててめちゃくちゃ驚いた。当たり前だけど、普段A.B.C-Zで歌ってる時と声の出し方が全然違うんだなあ。


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ワーグナー役の別所さんとの声の対比も良かった。別所さんの重厚な貫禄を感じる歌声と、はっしーの繊細で澄んだ中性的とも言える歌声。エリザベート役の夢咲さんとの歌声の重なりも心地よくて、耳が幸せってこういうことを言うんだなあと…。


特に印象に残っているのは、はっしーの"怒り"の演技です。激昂するとかいう感じではなくて、静かに湧く哀しみを帯びた怒り、みたいなのが表情と歌声にしっかり乗っていた。根底にずっと"理解されない寂しさ"とか"哀しさ""苦しさ"を纏っている感じがすごく表現されていたなあ。

(ルートヴィヒの両親のことや、生い立ちとか恋愛観とか、本編では明言されないようないろんなことをかなり研究して演技プラン立てたんだろうな…とすごく感じた)

カーテンコールでは「正直、辛かったです。周りの方はみんなプロの方ばかりで…その中で素人が主役なんていいのかなって…だから、もう、言っていいですか?ぼく、頑張りました!!!」とはっしーが言ってたけど、本当にすごかったよ…頑張ったよはっしー


あと衣装がとにかく素晴らしかった。主役ということもあって、はっしーはいちばんお着替えが多かったのだけど、全ての衣装がとても似合ってた!

冒頭と最後に着ていたドレープが贅沢に入った白の衣装、あれを着こなせる日本人ってほとんどいないと思うよ…笑

いちばん好きだったのは、鮮やかなロイヤルブルーの軍服?に真紅の豪華絢爛なマントを羽織ってたやつ。はっしーのマント捌き超素敵だった…重いだろうし、引きずるほど長いから踏んづけちゃいそうなのにすごいや。

 

 

カーテンコールでは、再演への意欲みたいなお話も聞けたし、ぜひ再演して欲しい。作品自体もそうだけど、何より素晴らしい楽曲たちがこれで終わりだなんて勿体なさすぎる!

出演者のみなさんともとても仲良さそうにしていて、雰囲気もすごくいい環境のなかではっしーはお芝居していたんだなあというのがよく分かったのですごく嬉しかったです。別所さんの力もかなり大きかった感じがしました。あんなに明るくて愉快でフランクな方なんだなあ…ハムの人のイメージしかなく…笑 すみませんでしたって感じだよ…

できることならまた同じキャストで再演できることを楽しみにしています!はっしー本当にお疲れ様!

 


(たまたまだけど大千穐楽の日が誕生日だった。とても良い一日になったよ、ありがとう国王様!)

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